不動産業に対する世間の錯覚

最近ある事件が起こり、

懇意にしていた建築業者の人との交流を打ち切りました。

そこで、自分的にはいまだに怒りが収まらず、納得もいかないのですが、

その方は、

「何でこの人怒っているんだろう?」

という感覚のようです。

この差はどこから生まれるのでしょう?

この方も世間も「不動産業」という職業の本質を理解していないから、

このようなことになるのだと思います。

我々不動産業は「受託業」です。

これは建築のような請負業とも、

製造業とも、販売業とも、サービス業とも違う職業です。

依頼があって初めて行動するのですが、

請負業と違い確実に報酬を得られるわけではありません。

報酬はあくまで成功報酬なのです。

つまり報酬の保証のない仕事です。

ですから、我々は途中で考えを変えたり、

ほかの業者に行くお客様を嫌います。

適当なことを言い、前言を翻す売主も嫌います。

今回は、ある業界団体の建築業者の方からいただいた、

「地域再生」

についてのお仕事でした。

我々は不動産のプロですので、依頼されたことの実現に向けて、

忠実に調査し、関係する機関との調整をしました。

ただこの依頼者、仕事が遅いのです。

しかも現状では実現不可能なので、実現可能なプランを提示したところ、

「不動産工房ゆくはしさんは、

ご自分でやられた方がうまくいきそうだから、

ご自分でどうぞ、儲けてください」

この言葉に怒るのはおかしいでしょうか?

経費をかけ、時間をかけ、調査し、人を紹介し、プランニングし、

その結果、「勝手にどうぞ」、

さらに、「なぜそんなに怒っているんですか?」

これ怒るのおかしいでしょうか?

でも実はこの人、悪気はないのです。

本当に不動産工房ゆくはしが、

自分でやった方が儲かるので善意でいっているのです。

ただし、不動産工房ゆくはしは受託業ですので、

依頼された仕事にしか興味がありません。

自分でやる発想はないのです。

不動産業者の世界において、デベロッパーという自ら開発する業者は、

実は、ものすごく特殊なのです。

「人の建てた建物を売る」

「人の造成した土地を売る」

これが我々の仕事の本質であり、

自ら建築したり造成したりするのは、苦肉の策だったりするのです。

つまり、あまり自分で何かをすることはありません。

我々不動産業者の立場で考えると、

経費をかけ、時間をかけ、調査し、人を紹介し、プランニングした結果、

単にはしごを外されただけなのです。

経費も、時間も、調査も、プランニングもまだ我慢できます。

人を紹介して、その結果

「やっぱりあれダメになりましたー」

これが信用問題になるというのがこの方は理解できないようです。

我々は受託業者ですので、信用を最も大切にします。

「だめでしたー」

では、通用しない世界にいるのです。

結果、この方に関係するすべての機関との関係を断ち切ることになりました。

それでも、おそらくこの方は

「なぜ一方的に怒っているんだろう」

としか考えないようです。

これ実は、建築業者さんに多い発想なのです。

以前にもこのような対応を受けた経験があります。

「請負業と受託業は違う」

ご理解ください。