民事信託 ケーススタディ1

民事信託で受けた相談事例について、

書いていきたいと思います。

ケース1

「アパートを持っている父が認知症になりました」

このケース、相続人と想定されるのは配偶者と、子1、子2、子3です。

但し、配偶者は、父親より早くに認知症となり意思の疎通はできません。

財産はアパート1棟、自宅の土地建物、預金3000万円ほど。

アパートは時価評価でおよそ2000万円ほど、

自宅は1000万円ほどになります。

アパートの賃収は年間およそ240万円ほどです。

子1は、サラリーマンで近くに住んでおりますが特に親の面倒を見ることもありません。

子2は東京におり、返ってくる意思はありません。

子3は独身の女性で親と同居、両親の介護を一人でしています。

まずこの場合相続財産の心配が起きるのですが、実際は存命なので架空の空論となります。

この家族は民事信託の制度を知りませんでしたので、

何事も手続きをせず、

家庭裁判所による法定代理人の手続きになりました。

資産総額がおよそ6000万円ほどありますので、

法定後見人は弁護士が選任されました。

両親二人とも自宅より遠い介護施設に入所したため、

子3は、

介護のために施設の近くにマンションを買いたいと思いました。

「親の預金からマンションを買ってもいいですか?」

後見人は拒否します。

アパートを借りるのは許可しますが、

マンションを買うことは許可できないと言われます。

仕方なく、子3はアパートを借りて住み、介護をしますが、

問題は親の持っているアパートです。

そこで近くに住んでいる子1にアパートの管理を頼みます。

子1は、入退居の契約などをしているうちに、

入居率が悪くなっていることに気が付きます。

不動産屋に相談すると、

「古いですからリニューアルしないと難しいですね」

といい、

リフォームではなく、

リノベーションの資料を置いていきました。

この資料が子1の妻の目にとまります。

子1の妻は考えます。

「こんな素敵なアパートのオーナーで、

家賃収入があって、私ってかっこいい!」

妻は夫である子1に、

「お義父さんの貯金でリノベーションしましょう!

うちで相続しましょう」

後見人は、当然断ります。

死亡していない人の財産を、

相続予定の人の自由にさせることはできません。

「あんな弁護士に後見なんてさせるからだ」

妻はそう考え、後見人罷免の手続きをしようとします。

当然そんなことはできません。

そこで妻は、初めて民事信託という言葉を耳にします。

「後見をやめて民事信託にしてほしい」

これ出来ないんです。

信託する意思表示が認知症ではできないため、

後見人の判断になりますが、

後見人は、

財産を勝手に処分する恐れのある親族に委託することはできないと考えます。

それもしやられた場合の責任が負えないからです。

今日の教訓

「認知症になってからでは遅い、転ばぬ先の民事信託」