可能性があるのならチャレンジしたい

「可能性があるのならチャレンジしたい」

最近相談に来られたお客様のセリフです。

この方、

ある場所にこだわりがあって、その場所以外に住みたくないのです。

問題はその地域には売物件がないこと、

というより、宅地がないのです。

 

 

ほとんどが農地で、まばらに立つ家は農家住宅です。

農家住宅というのは、農業をされる方が一代限りの限定で

建築を許されるもので、亡くなると同時に解体しなければなりません。

つまり売買の対象になる家ではないし、

農業従事者以外が居住することは、ほぼできない地域です。

 

「でも可能性はあるんでしょう?

可能性があるのならチャレンジしたい」

可能性はないですね。

 

その土地は、第一種農地です。

第一種農地は、住宅建設に限り農地転用が認められます。

 

つまり、第一種農地という部分だけで考えると可能性はありますが、

行橋市は全域が農業振興地域なので、

 

①農用地区域以外に代替すべき土地がないこと。
・農用地以外の土地とすることが必要かつ適当な土地か?
・農用地区域以外の土地において代替する土地がないか?
②農業上の効率的かつ総合的な利用に支障を及ぼすおそれがないこと。
・周辺農用地の営農環境への支障が軽微か?
・農地の集団性を損なうものではないか?
・土地利用上の混在が生じないか?
③効率的かつ安定的な農業経営を営む者に対する農用地の利用の集積に
支障を 及ぼすおそれがないこと。
・認定農業者等の農地の利用集積に支障を及ぼすものではないか?
・認定農業者等の経営する一団の農用地の集団化が損なわれるものではないか?
・認定農業者等の経営改善計画の達成に影響がないか?
④土地改良施設等の有する機能に支障を及ぼすおそれがないこと。
・農業用用排水施設の分断や排水の阻害などのおそれがないか?
⑤農業生産基盤整備事業完了後8年を経過していること。
・土地改良事業の実施中または実施完了後8年未満ではないか?
※上記要件以外に他法令の許可見込みも必要です。

という条件に当てはまる場合に限って、

「農振除外」

と呼ばれる変更手続きの許可が下ります。

 

この地域の不動産屋でもこの規定を知らない人が多く、

「勝手に埋め立てて、許可を取ればええ」

などと言っているようですが、これ違反で、

何十年も経たないと許可になりませんし、

許可にならない場合もあります。

 

というより、

農振除外できる方が奇跡なのです。

そこで、

「可能性があるのならチャレンジしたい」

となるわけですが、

「勝手にチャレンジしてください」

としか言えません。

まず農地を購入するために農業従事者にならなければならないので、

農機具など1千万円近くをそろえての申請となり、

そこで農業従事者と認められて、農地の購入ができます。

 

ここまででおよそ3年と1千万円かかります。

農地自体は今時いくらでも買えるので問題はないでしょう。

農地購入は農業委員会です。

 

農振除外が受けられるかどうか未知数ですし、

この作業は行政書士の仕事ですので関与できません。

農振除外は審査にほぼ1年かかります。

 

そこまでして初めて、農地転用の許可が下ります。

もっとも農業従事者になれば農家住宅という技が使えます。

宅地であれば坪当たり2万円程度の土地に、

ここまでで造成費を含めると2千万円以上かかっています。

 

「可能性があるのならチャレンジしたい」

は立派ですが、大人のやることではありません。