土地を少し売りたい

「土地を少しだけ売りたいんですが」

かなりのお年を召した女性のお客様、

お話をお伺いすると、土地というのは農地です。

それも一部だけ。

理由は、

「子どもたちが相続に困らんようにお金を用意したい」

とのこと。

売りたいのは巨大な田んぼの一部。

「いくらぐらい必要なんですか?」

「1000万円ぐらいあれば」

この地域はきちんと造成されていれば、

坪5万円程度で取引されるので無理な話ではないんですが…

「この土地は、

売るためには農業振興地域除外の申請が必要で、

その後、農地転用許可申請が必要で費用は20万円ぐらい、

面積的には開発許可は必要ありませんが、

道路位置指定が必要となりますので、

文筆のための確定測量とで150万円ぐらい、

造成工事費が1千万円ぐらい、

設計料が100万円ぐらい必要です」

「へ?」

「そこまでかけて、

およそ1000万円ぐらい残ると思います」

「…そんなだいそれたことじゃないんですが」

「そんなに甘くないんですが、

しかも、農地転用が許可にならない場合もありますので」

「…」

「不動産工房ゆくはしは、

相続を含めた総合コンサルティングをしますので、

まずすべての財産を

明示して頂いた上でのご相談になると思います」

「遺言書とかはもう準備してあるんですが」

「便箋に書いて、封筒に入れただけですね?」

「はい」

「それはだめですよ」

「?」

「遺言書は、きちんとわかりやすい文面で書いた上で、

封印し、表に「家庭裁判所以外では開封しないこと」と、

書いておかないと無効になります。

もしくは公正証書にしなくてはなりません」

「そんな大それた」

「そこまでやっても、法定遺留分を超えることはできません」

「はあ」

「さらには、

その遺言書によって兄弟が絶縁状態になることも防げません」

「兄弟仲はいいんですよ」

「兄弟と言っても結婚されているでしょう?、

配偶者がそれぞれの意見を言うと無茶苦茶になるんです。

遺言書などで防げませんよ」

「でも保険の人が…」

「保険会社の人は契約がほしいだけで、

その後の親族の争いには興味がありません」

「…」

「まずすべきことは、

家族で話し合いをすること、

その上で、

すべての財産の状況をお話していただいて、

どういうやり方がいいのか検討します。

土地を売る時期は今の市況ですと早いほうがいいんですが、

無計画にしても仕方がないと思います。

まず家族でお話しいただいてご来店ください」

ということになります。

この方はおそらく二度とご来店されないと思います。

相続と、残されるご家族に対する真剣さは、

なかなか持てるものではありません。

いちばん大切なことなんですが、

これは他人がどうのこうのできる問題ではありません。

ただ、

「少しだけ土地を売りたい」

というのは、

実はそんなに甘くないのです。