鳥居の話

鳥居というのは、日本固有のものらしく世界に例がありません。

日本文化に影響を与えたと思われる韓国や中国には、

この文化はありません。

シルクロードのどこにもその起源はなく、

メソポタミアやギリシャ・ローマの建築にすら、

その起源を求める人もいますが、

これはこじつけでしょう。

鳥居という言葉も、

「鳥居る」

という言葉と考えられ、

鳥がいる場所だから鳥居なのだと思います。

建築物?工作物としての鳥居は面白く、

よく言われる

「建築の構造計算では、立っているのが不思議なもの」

と言われますが、

剛構造主体の建築計算で解析不能なだけで、

鳥居は柔構造なので、計算できなくてもあたり前なのですが…

この鳥居、

とにかく倒れません。

最も倒れないのは、古いもので、木造のものだけです。

鳥居の材料は実にいろいろなものがあり、

木、石、コンクリート、金属、陶器と、

いろいろなものがありますが、

最近では塩化ビニールのものもあります。

どのような天災でも倒れにくいと言われるのは、

木製のものだけです。

しかも近代のものではなく、

昔に作られたものだけです。

昔の鳥居は、

基礎となる礎石に穴を開け、

その穴に柱をユルユルに突っ込んだだけのものです。

つまり何も固定されて要らず、

常にブラブラの状態で、

木の重量だけで立っています。

これは宮島の鳥居を見ればわかりますが、

海の中にある鳥居で、

波に対する対策なのでしょうか、

門構えのように控柱を持ちます。

ただし、

宮島の鳥居は、全くどこにも固定されていません。

あの鳥居、実は置いてあるだけなのです。

木の重量と、

大潮の際に木の浮力で浮くのを防ぐ、

重りの石が載せてあるだけなのです。

現在のものは8代目と言われ、

元のものがどのようなものであったかはわかりません。

何度か倒壊したり、

落雷にあったり、

消失しているようです。

ただしこれは海の中という特殊な場所にあるためで、

通常地上のもので、

腐朽以外での倒壊というのはあまり聞きませんが、

この「倒れない鳥居」というのも

「消失技術」なので、

実際のところ今現在再建できる技術は、

一部の人が守っているだけです。

このことが、

「建築学的に異常なもの」

と言われるゆえんだと思います。

現在の日本の建築基準法は、

日本の木造建築技術の殆どを殺してしまいました。

今その建築基準法が国土交通省の黒歴史となり、

日本家屋の耐久性能を大幅に下げる結果となっています。

困ったものです。