思いやりがあるかどうか

日本の法律では、

売買の意思の表示は文章である必要はありません。

売買について当事者双方の合意があれば、

対象となるものと対価の交換によって売買は成立します。

ただし、口頭での合意の場合、

第三者にその事実を証明する手段がないために、

「契約書」という文章を証拠として残します。

「契約書」は売買の事実の証拠ですので、

細かな点は記載されません。

その不足する契約の情報を補完するのが

「重要事項説明書」というものになります。

この二つがあって初めて契約が成立しますが、

我々業者間取引では、重要事項説明書は作りません。

プロ同士なので必要ないのです。

「重要事項説明書」というのは、

「契約弱者の保護」を目的とする文章です。

この場合の契約弱者というのは、

「不動産の知識を十分に保たないもの」であり、

この契約弱者が、

「だまされないように保護するためのもの」

が重要事項説明書だと考えることが出来ます。

ところが、

契約弱者の保護の目的で作られた宅地建物取引業法によって、

資格認定された宅地建物取引主任

(当時、現在は宅地建物取引士)が、

逆にこの重要事項説明書をうまく利用して、

契約弱者に迷惑をかけるということが、

当初から現在まであとをたちません。

これは、

まず最初に法整備の不備が挙げられるのですが、

宅地建物取引業法の制定時には、

不動産の測量の方法が、機械の精度の問題もあり

かなりいい加減なものだったということ。

建築基準法もいい加減だったこと。

登記の不備や、戦後の土地の奪い合いの訴訟が、

まだ続いていたこと(一部は今だにもめていますが…)

等の不動産業者が、

きちんとした説明が不可能な社会状況もありましたので、

すべてが業者のせいではありません。

ただし、

日本の宅地建物取引業は、

世界一重い責任を負わされているのですが、

世界一手数料が安いのです。

つまり、

「適当にせんと、やってられん」

という状況を国自体が作り出しているのです。

そういう状況下で作り出される契約書と重要事項説明書は、

曖昧表現だらけの文章となり、

結果、その判断についての訴訟が絶えないのです。

この事実は、各不動産協会の提供するひな形も

そのような作りになっています。

いわゆる「甘い契約書」ですが、

逆に国土交通省が求める宅地建物取引士の知識は

一人の人間の知識量を超える所まで来ています。

つまり、

国土交通省が求める契約関係書類を

厳密に作るには弁護士が必要ですが、

弁護士に依頼するほどの手数料は認められてないため、

宅地建物取引業者自らが書類作成せざるを得ず、

その結果曖昧の表現にならざるを得ないものを

無理やり国土交通省が厳密なものにさせようとしている、

と解釈できるのです。

このような社会状況下で、

契約書を厳密にすることは、

自らの責任が増すだけで何のメリットもありません。

不動産工房ゆくはしがチャレンジしているのはこの部分です。

契約するお客様に思いやりのある契約書類は、

「訴訟の起きない契約書」です。