不動産業界の世代間ギャップ
先日、不動産業を開業してから50年という、大先輩と中古住宅の査定に行く機会がありました。
家は旧耐震、
いわゆる昭和56年以前の築40年以上のお宅でしたが、
とても立派な家でした。
ただし、10年以上空き家だったのでしょう、
建物の各所に雨漏りがあり、
また床下から天井裏から動物が出入りに使った穴が、
たくさんありました。
「これは雨漏りですよね」
「いや、そんなことないだろ」
「これも雨漏りですよ」
「違う、そんなもん関係ない」
「これは動物のおしっことか糞ですね」
「そんな馬鹿な話があるか!」
とまあ、全く会話が噛み合いません。
そして、
「あんたは、ちまちまとつまらんこと言い過ぎる」
と怒られました。
我々いわゆる宅地建物業者の新世代は、
土地・建物についてかなり勉強します。
理論武装しないと法的に自分を守れないので、
一生懸命勉強します。
しかし、昔からの不動産屋さんというのは、
経験と勘でものを言うのですが、
法律の改正等すら知らない状態で、
契約書なども未だに手書きだったりします。
それ自体その業者それぞれの考え方で、
それはそれで民事上のことなので、
本人さえよければ、
訴えられることもやぶさかでなければ、
何ら問題はありません。
圧巻は、敷地境界を示す境界杭なのですが、
この中古住宅については、
境界明示が国土調査の際に打たれたコンクリート杭なのです。
「国調杭だ!この杭があれば絶対だ」
そうでしょうか?
国土交通省は、ここ何年も国土調査の際、
家が建っている場所については、
コンクリート杭を使っておりません。
ということは、
この地域には30年以上国土調査が入っていない、
ということになります。
現況では、竹木越境がかなりあり、
かつ仮に国土調査がこれから入るとしても、
錯誤による地籍修正が起きると思われます。
つまり、このコンクリート杭の境界は、
あてになりません。
このことについて契約書に、
あるいは重要事項説明書に、
境界は問題ありませんと記載すると大変なことになります。
不動産工房ゆくはしでは、
契約書や重要事項説明書に、
「境界杭はあてになりませんので
地籍変更が発生する可能性があります」
ということを明記し、かつ説明します。
これは自分をまもるというよりも、
お客様はこれからこの場所で生活するので、
ただでさえ、
新しい住民には近隣は優しくないのに、
境界などで余計にトラブルを抱えさせるということは、
不動産業者として「いかがなものか」と、
思わざるを得ないからです。
自分が儲ければいいのか?
社会的な責任を負う仕事なのか?
宅地建物取引士に、
名称が変わったということは、
「社会的な責任を負いなさい」
ということです。
実際にそのように法律は変わりつつあります。
広く浅くから広く深くに、
知識の要件も増えています。
「弁償すればいいんだろ!」
という時代ではありません。