出来ないのはおかしい?=売買のIT重説業者の免許取消
先日、不動産売買について重要事項説明書の説明業務を、ITにおいて行った業者の宅建免許の取り消し処分が出ました。
この業者、2019年の9月ごろから売買についての重要事項説明書の説明を、
ITによって繰り返し行っていたようです。
我々宅地建物取引業者において、
「宅地建物取引業の免許取り消し処分」
というのは、それほど見かけるものではありません。
というよりめったにない処分です。
ほとんどの場合、取り消し処分というのは、
「社長ないしは役員が逮捕された」(宅建業法に定める事由)
「社長ないしは役員が反社会勢力だった」
「供託金の不足を補充しなかった」
という理由によるもので、
「重要事項説明書の説明」
についての違反は、「指示」とか「業務停止」が多いのです。
つまり取り消し処分だけを取り上げると、
「かなり重い処分」ということになりますが、
現実にはおそらく、
「何度かの行政の指導があり、何ら改善されなかった」
ということなのだろうと思います。
これは日本のマスコミの問題点なのですが、
今回のコロナでもそうで、
「目立つ点だけを取り上げて大騒ぎするが大切なことは報道しない」
ということなのだろうと思います。
この業者のインタビューを見て思ったことは、
「コロナなんだからITで重説できないのはおかしい」
というセリフに違和感を感じました。
だって、この業者、コロナ以前からITで重説をやっていたのですから。
それに、
おかしかろうがどうであろうが、
「許認可業」において法令順守は当たり前であり、
「法令がおかしくとも法令は順守して、意見として法改正を目指す」
というのが当たり前の道筋で、
「勝手に法解釈をして行動する」
というのは間違いです。
ただし、おそらく一般の方においては、
売買のIT重説についてピンとこないと思います。
これ、宅地建物取引士試験では毎年出る問題なのですが、
「宅地建物取引業者が宅地建物取引士をして当事者に対して契約上重要な事項を説明すること」
ということを根拠としています。
「対面で」
という事柄が欠如しているようにも思えるのですが、
「書面を交付し」
という事柄があり、
実際には、この法律ができた時点では、
「書面を交付し指し示しながらの説明」
というのは対面以外では考えられないため、
法律の常識的解釈により「対面にて」となります。
実際に賃貸についてのIT重説は解禁されましたが、
これは、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」という
単に、役所の課長レベルの判断で
「とりあえず違反に問いませんよ」
ものであり、正式な法改正ではありません。
つまり、宅地建物取引業者は
「賃貸のIT重説」
自体が社会実験的運用に過ぎず、具体的な法改正ではない、
ということを自覚しなくてはなりません。
少々面白い事件なので書きました。